日本舞踊とは
日本舞踊の始まり
日本舞踊の起源は、日本神話に登場する天鈿女命(アメノウズメノミコト)が天岩戸に隠れる天照大神(アマテラスオオミカミ)を出すために舞ったことまで遡ります。その後、様々な日本の芸能の要素を吸収し、今日の日本舞踊の形に至るのです。
そうして聞くと日本舞踊は古くからあるもののように感じますが、日本舞踊の最初の流派が誕生したのは300年ほど前で、日本舞踊と呼ばれるようになったのは明治時代以降のことです。
卒業制作『道紡花未来~みちつむぐはなのこれから~』よりアメノウズメ
歌舞伎と日本舞踊
長唄『男舞』
日本舞踊の特徴
よく歌舞伎と日本舞踊の違いについて質問されますが、歌舞伎は踊りと芝居の2つで構成されています。歌舞伎の踊りは「歌舞伎舞踊」と呼ばれ、日本舞踊は主に「歌舞伎舞踊」「ご祝儀舞踊(おめでたい格調高い演目)」「上方舞(関西で発展した舞)」などで構成されています。歌舞伎の振り付けをしていた役者が、独自に弟子を取り舞踊を教え始めたのが日本舞踊と歌舞伎の道の最初の枝分かれでした。歌舞伎の世界は現在でも男性だけで、特別な事が無い限り女性はその舞台に立つ事はできません。日本舞踊と歌舞伎が枝分かれした事により、多くの女性が日本舞踊の伝承に関わる事ができるようになりました。そして、現在ではたくさんの流派が生まれ、それぞれが独自の特色を生かした舞踊の継承と発展に力を注いでいます。
・役柄
日本舞踊では様々な役を演じます。ある時はきれいなお姫様、またある時は勇ましい武士、老婆や狐など、日本舞踊家には様々な役また一つの作品の中で次々と別人物になるという趣向は日本舞踊ならではのもので、仏が姿を変えて衆生を救いにくる変化身(へんげしん)の思想、日本人の精神性が流れています。
・扮装
役柄にあった衣裳を身に纏い、着物で踊られることがほとんどですが、「阿蘭陀万歳(おらんだまんざい)」という演目では、シルクハットを被った南蛮の服装を着た男とピエロが主人公です。
「瓢箪鯰(ひょうたんなまず)」という演目では、鯰の着ぐるみを来て踊ります。あまりイメージがないと思いますが、実は、日本舞踊には見た目もコミカルで面白い作品があるのです。
・見立て
日本舞踊は景色などの風景描写があります。風や花、山や月など、自身が自然の一部となって風景を描写するのです。扇子を障子に見立て覗いたり、打ち寄せる波を表現したり、ハラハラと散る桜吹雪を表現したりと、扇子を使って直接的、間接的に様々なものに見立てることができます。
・音楽
基本的には三味線、鼓、笛などの日本古来から伝えられてきた楽器に唄を合わせた音楽を伴奏音楽とします。また、効果音の意味もわかるととても面白く、大太鼓によって表現される風の音、雨の音、波の音などで演目の情景までも想像することができます。
・舞台
国立劇場や、歌舞伎座、日本橋公会堂などで日本舞踊を見ることができます。地域の公民館や文化会館では、無料のおさらい会を開催していたりしますのでお気軽にご覧になれます。また、気に入った日本舞踊家の方がいれば、検索してみるとその方のリサイタル情報なんかも掲載されているかもしれませんね。最近では新型コロナウイルスの影響もあり、舞踊会が中止になる一方で、配信でご覧になることができる公演が少しずつ増えてきています。
・創作舞踊
創作舞踊とは日本舞踊から派生した、伴奏音楽や衣裳、振り付けの型に制限がなく、クリエイティブな発想から生み出される舞踊になります。一言で言ってしまえば「自由な枠組みの中にある日本舞踊」です。定義することはとても難しいのですが、作品に振付者の思想や感性が大きく反映されるものなので、それぞれの作品の違いに面白みを感じていただけるかもしれません。